これでいいのか?日本の医療

東北大学医学部を卒業し、37年が経ちました。この間、東北大学病院で14年間、診療、研究、教育に携わり、ハーバード大学などで計4年間、基礎医学を研究し、勤務医として11年間、開業医として8年間、診療に携わりました。様々な立場で医療に関わりましたが、現在、WHOが世界一の医療と認めた日本の保険診療が、医療費の高騰により、破綻の危機に瀕しています。抜本的な改革が必要なのに、なんら有効な対策が取られていません。この状況を憂い、日本の医療の課題について、私の考えを、平成最後の日まで毎週一回、皆さんにお伝えしたいと思います。

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 まず、最初に見ていただきたいのが、厚生労働省が作成した年齢別一人あたりの医療費とこれを基に推計された日本人の生涯医療費を示したグラフです。生涯医療費の総額約2700万円の半分を70歳までに、残りの半分を70歳以降に使っていることがわかります。いかに私たちが医療を利用し、医療がどのようにその期待に応えているかが見えてきます。例えば、4才未満では、先天性の問題や、未熟なことより病気になり、医療費が高くなりますが、その後、問題は解決し健康となり、必要な医療費も減少し、60才くらいまでは入院することもなく元気に過ごすことができています。この期間、医療は国民の期待に十分応えているといえます。ところが、60才を超えると、医療費は、下がることなく上昇の一途で、入院の比率も高まります。そして、死を迎えることになります。

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 このグラフを見て、どう思われますか。年を取れば、体が弱るので、病院にいく機会が多くなり、お金がかかるのもしょうがないのでしょうか?それでは、超高齢社会に突入した日本で、医療費が増加し続けることを止めることはできません。なにより、死を待つように人生の最後を病院で過ごすことを望みますか?私達は、生涯医療費の半分を70歳まで健康に生きるために使っています。ところが、残りの半分はまるで死ぬ準備のために使っているようにみえます。医療の使命は健康の回復維持であるはずです。死ぬために病院に行く人はいないでしょう。70才以上の方に対して、現在の日本の医療は期待に応えているとはいえません。医療改革が必要です。次回より、具体的な問題点について、考えていきたいと思います。

hozawa (2018年8月23日 12:24)