新しい薬ができるまでには、化学的に薬を作り出す基礎研究、薬の効果や副作用を調べる動物実験、人での臨床試験の積み重ねなど、約15年間の歳月と、300億円の費用がかかります。経済産業省技術戦略マップ2009「バイオテクノロジー:創薬・診断分野」によると、新しい薬の候補が見つかって、実際に医薬品になる確率は約2万分の1です。

 

 しかも、動物実験は、優れた実験計画を立てて、遺伝的にほぼ同一のマウスを使用しても、同じ結果が出ることはありません。何回も動物実験を繰り返さなければ、信頼性の高い結果は得られません。その一方で、動物愛護団体からは、動物実験は動物の虐待だと、厳しい批判を受けることになります。

 

 1938年、ウォーレン・ウィーバーにより提唱された分子生物学が、1970年代には、高等生物に応用されるようになりました。生命現象を遺伝子、分子レベルで明らかにしようとする学問です。膵臓からインシュリンが分泌されるのは皆さん御存知だと思いますが、分子生物学の手法を使うと、膵臓を構成するどの細胞から、どのようにインシュリンが合成され、どのようなときに、どのように分泌されるかがわかります。

 

 製薬会社、薬理学者が、この方法を見過ごすはずがありません。細胞表面の受容体をブロックする物質、ある物質の活性を抑制する物質、あるいは活発にする物質など作るべき薬の、構造、機能が明確になりました。そして、試験管の中で、バラバラにした1個の細胞に新薬を作用させる実験は、ほぼ毎回、同じ結果になりました。細胞に対する実験ですから、動物愛護団体からの批判もありません。新薬開発は順調に進み、沢山の降圧剤、糖尿病薬、向精神薬などが作られていきました。これらは、確実に血圧を下げ、血糖値を下げます。分子薬理学は、人類の救世主のように感じられました。しかし、高血圧、糖尿病を完治させる薬ではありませんでした。

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 病気は、いくつもの事象が、ドミノ倒しのように連続して関連し、発症します。最初のドミノが倒れるのを防げば、病気は治ります。しかし、分子薬理学で作られた薬は、ドミノ倒しの末端近くのドミノを支える薬です。薬の効果は、血圧、血糖など数値にはっきりと表れます。しかし、大本のドミノが倒れるのを止めているわけではないので、ずっとドミノを支え続けなければいけません。薬を飲み続ける必要があります。徐々に、支えることができなくなり、より強い薬、より沢山の薬、より大量の薬が必要になる事もあるでしょう。最終的に、支えきれなくなると、病気の進行が止められなくなります。これまで、対症療法の弊害についてお話ししてきましたが、分子薬理学によって作られた薬は、対症療法の主役です。分子薬理学の隆盛が、日本に対症療法主体の医療をもたらしたと言っても過言ではありません。

 

 

 分子薬理学で作られた薬は、試験管の中の1個の細胞には確実に効果を発揮します。しかし、私たちの健康を守る救世主になる事はないでしょう。なぜなら私たちは、アメーバのような単細胞生物ではなく、この地球上で最も進化した多細胞生物のホモサピエンスなのですから!

 

 次回は、単細胞生物と多細胞生物の違いから、私たちの健康の維持に本当に必要なものは何かを考えます。

 

朴澤 孝治

hozawa (2018年9月22日 19:40)

今回は、対症療法主体になった現代医療の問題点について考えます。

 

 対症療法は、簡単に言うと、下痢をしている人に下痢止め、痛みがあったり熱が高い人に解熱鎮痛剤、血圧が高い人に降圧剤を投与する治療です。下痢は、腸の中に有害なものがあるので、体外にいち早く出そうとする体の反応です。これを止めると有害な物質が体内に残り、病気は長引きます。発熱は、熱に弱いウィルスの増殖を抑え、ウィルスと戦う免疫細胞を活発にする反応です。熱を下げてしまうと、ウィルスとの戦いは長期化します。こんな治療は、無用ですね。

 

 不眠と全身の痛みに悩んだ、マイケル・ジャクソンは、鎮痛剤、睡眠薬などを常用していましたが、処方された薬が徐々に効かなくなり、医療用麻薬などより強い薬が必要となりました。これも効果が無くなると、主治医は、究極の鎮痛、睡眠薬である麻酔導入剤を注射しました。マイケルの呼吸は停止し、そのまま目を覚ますことなく帰らぬ人となりました。対症療法が、如何に恐ろしい結果をもたらすかを教えてくれた、悲しい事件でした。

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 高血圧の治療薬である降圧剤は、血管を拡張したり、腎臓に働いて循環血液量を減らしたり、心臓の拍出量を落とすことで血圧を下げます。血圧が高くなった根本原因に迫る治療ではありません。ですから、降圧剤を一生飲み続けなければいけません。日本では70才以上の方の半分以上が、降圧剤を服用しています。

 

 このように、対症療法は、一時的に症状が改善しているようにみえますが、結局は病気を根本的に治していません。病気が治らないと、患者さんは通院を繰り返さなければいけません。病院は多忙となり、数時間待って、3分の診察で薬をもらう医療となります。医師も疲弊し、医療はつまらないものになります。こんな医療なら、人工知能が医師に取って代わる事も可能でしょう。待ち時間も少なく、合理的な外来になるかもしれません。

 

 しかし、医療の本質はよりダイナミックで、創造的なものであるはずです。診察の合間に患者さんがお話になる生活や食事の状況、最近の出来事など、ちょっとしたことが、診断や治療のヒントになります。毎日100人以上の患者さんを診察すると自慢される医師に、"ちゃんと患者さんを治さないといけないよ"と話すと、きょとんとされます。患者さんは健康になれば、病院に通う必要がありません。患者さんを病院から解放することが、医師の務めです。ちなみに、私の自慢は、開院以来、1日の受診患者数が100人を超えたことが無いことです。

 

 日本の医療費は、1990年20.6兆円から2010年には37.4兆円に増加しました。この間、入院費用や、外来費用の比率は減っているのに、薬剤費のみが増加しています。医療の質の低下、増加し続ける医療費など、現代医療の問題点の多くが、対症療法主体の医療に起因していることが、おわかりだと思います。

次回は、なぜ、日本の医療が対症療法主体に変わってしまったのかを考えます。

                                            朴澤 孝治

hozawa (2018年9月13日 19:21)

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朴澤耳鼻咽喉科、統合メディカルケアセンターTree of Lifeは

以下日程を臨時休診と致します。

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  9月18日(火) 

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ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承くださいませ。

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(水、日、祝は定期休診日です。土曜日は午前中のみ診療しております。)

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また、9月は、祝日が多いため、早々に予約が埋まっております。

直接お越し頂き、お待ち頂けるようであれば予約外でも受診は可能でございます。

ただし、混み合った際には少し待ち時間が多めにかかりますので

お時間に余裕を持ってご来院くださいますようお願い申し上げます。

 

 

朴澤耳鼻咽喉科スタッフ (2018年9月11日 11:13)