めまいが長く続く方に、前庭神経炎?

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ぐるぐる回る回転性めまいとふらふらする動揺性めまい
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めまいには大きく分けて、ぐるぐる回る回転性のめまいと、船に乗っているようなふらふらするようなめまいがあります。
日本語では、両方ともめまいと呼びますが、英語では回転性めまいはVertigo動揺性めまいはDizzinessと呼び分けられています。
秋田県でもたしか、まくまくする と うるうるする と区別されていたように思います。


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前庭神経炎のめまい
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さて、激しい回転性めまいが数日間続き、一旦軽快してもめまいの発作が繰り返す場合、前庭神経炎が原因のことがあります。
体の釣り合いを保つ三半規管、耳石器官の情報を脳に伝える前庭神経にウィルス、多くはヘルペスウィルスが感染することで発症します。
ヘルペスウィルスは、子供さんでは水疱瘡、大人の方では帯状疱疹をおこすウィルスです。

前庭神経炎のめまいは、その経過で3つの部分に分けられます。
第1ステージは、ウィルスが前庭神経に感染することで始まります。
風邪症状をきっかけに、あるいは前駆症状なしに
回転性の激しいめまいが始まり、5日~10日ほど起きることができないほどのめまいが続きます。

第2ステージでは、ウィルスの活動が収まったあとの、前庭神経の機能低下によるめまいが起こります。
ふらふらするような動揺性のめまいが主で、まっすぐに歩けなかったり、頭を振るとめまいがすることが数ヶ月続きます。

第3ステージは、めまいが落ち着いてしばらくたってから、最初の時よりは軽いものの、
同じような回転性のめまい発作が時間をおいて繰り返すようになります。


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ウィルスの感染と再活性化
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ウィルスは私たちの体の細胞に入り込んで増殖し、症状を現します。
インフルエンザウィルスが入り込むのはのどや鼻の細胞ですから、私たちは感染した細胞を脱落させることにより、ウィルスを体の外に排出します。
のどや、鼻の細胞は脱落しても、新しい細胞が再生するので、問題ありません。
ところが、神経細胞は再生することが出来ないので、感染しても脱落してウィルスを体外に排出することが出来ません。
ウィルスが神経に感染すると一生神経細胞のなかに潜んでいることになります。

通常は免疫の力でウィルスを押さえ込んでいますが、体調が崩れて免疫が弱ると、ウィルスが活動を開始します。
これを、ウィルスの再活性化といいます。
帯状疱疹の方は、神経痛が悪化しますし、前庭神経炎の方はめまい発作をおこします。
これが、第3ステージのめまいです。


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抗ウィルス薬が、第1、第3ステージのめまい発作を和らげる
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最初の感染の時や、ウィルスの再活性化がおこり、回転性めまいが続くときは、
抗ウィルス薬を内服すると早くめまいを抑えることが出来ます。
第1ステージ、第3ステージのめまいが、適応になります。
患者様は、手元に抗ウィルス薬があれば安心です。
めまいを感じたらすぐに飲み始めれば、ウィルスの活動を早期に抑えることが出来、
あまりひどくならないうちにめまいが落ち着きます。


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第2ステージのめまいの改善にはリハビリテーションが大切です
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一方、第2ステージのめまいは少しやっかいです。
ウィルスが感染した神経は、情報を送る能力が低下します。
ちょうど、電気信号を送る電線が、何本か断線してしまった状態です。
脳は、左右の三半規管からの情報を統合して、体の釣り合いを保っています。
ウィルスが感染すると、感染した耳からは通常よりも少ない情報しか脳に送られなくなります。
すると、脳は混乱して体の釣り合いを保つことが出来ずめまいを感じてしまうのです。
飛行機の片方のエンジンが不調になり、もう片方のエンジンのみで飛行するようなものです。

飛行機は片方のエンジンだけでもちゃんと飛行することが出来ますが、特殊な操縦技術が必要です。
前庭神経炎の患者さんの場合も、片方の三半規管からの情報が少なくても、
ちゃんとバランスをとれるように脳の働きを高める必要があります。
このためには、薬を飲んでも効果が無く、体を動かすリハビリテーション、めまい体操をする必要があります。
医師の指導の下、段階を追ってリハビリテーションをすると、脳の機能が高まり、めまいが徐々に消えていきます。
めまいを感じたら安静にといいますが、この場合は例外で、安静にしているといつまでもめまいは良くなりません。

前庭神経炎のめまいはこのように難治で、状況に応じた治療が必要です。
なかなか適切な治療を受けることが出来ずに、長期間にわたりめまいで悩んでいる方もいらっしゃいますが、正しい診断と治療を受けることでめまいから解放されます

どうぞお気軽にご相談下さい。

院長

hozawa (2012年6月16日 17:32)