声の老化について

20代から80代までの様々な年齢の方に同じ文章を朗読していただき、その音声を録音し、
声を聞くことによりどのくらい正確に年齢を当てる事ができるかという研究がありました。
結果は、姿は見なくても、声を聞くだけで、ほとんど正確に年齢を当てることができました。
論文にもよりますが。99%の正答率を示した研究もありました。
声で年齢をごまかすことはできないようです。

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声変わり
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声はのど仏の中にある、左右2枚の粘膜のヒダ、声帯が振動することにより作られます。
年齢により、声は変化します。
10代の男の子の声変わりは、最も大きな変化でしょう。
2次性徴により、のど仏が大きく前方に飛び出てくることにより、声帯が長くなります。
1年で1cmも長くなることがあります。
声変わり前はウィーン少年合唱団のようなきれいなボーイソプラノだった声が、
短期間で、急に大人の低い声になります。


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声の老化
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老化によっても、声帯は大きく変化します。
女性の場合は閉経によりホルモンのバランスが変わることにより、
声帯は浮腫状に少しぶよぶよしてきます。
すると声は低い声になります。
男性の場合は、声帯がやせてきて、たわんでくるので、
無理に声帯を伸ばして発声すると高い声になります。
おじいさんの声は甲高く、おばあさんの声は若いときよりも低い声になるのです。


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声帯の加齢変化による声の不調
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日本は高齢化社会に入りました。
中高年の男性で、加齢による声帯の変化に伴い、声の調子が悪くなり当院を受診される方がいらっしゃいます。
退職された後、講演会を頼まれて話をすると、最初は声が出ているのに、
1時間の講演の最後になると声がかすれてでなくなる
と言う方がいらっしゃいます。
また、退職後、関連会社の相談役になり、会議が多いのだが、
大きな声がでないと、自分の主張が会議で通らなくて困るとおっしゃる方もいます。
定年後、第二の人生を楽しむため、詩吟を始めたが、
高音がでないのであきらめようかと思っている
という方もいらっしゃいます。

このような患者様の声帯を見ると、やせて薄くなり、たわんで、しわが見られることもあります。
声帯が張っている2つの軟骨、甲状軟骨と輪状軟骨の間隔(輪状甲状膜)は通常、8mmですが、
加齢と共に延長し、10mm以上に開いてしまうと、声帯がたわみます。
声帯をぴんと張る筋肉はのど仏の中にあり小さいので、
加齢による筋力の衰えが強く出る方がいらっしゃいます。

公園を、老夫婦が仲良く散歩しているのを見ると大変うらやましくおもいます。
ご主人が加齢により、声がかすれてしまい、奥様が老人性難聴になってしまうと夫婦の会話も大変です。
おじいさんの声は小さくて、何を言っているのかさっぱりわからない。
こんなに繰り返し言っているのにさっぱり伝わらない。
けんかになってしまうとこぼされる方もいれば、
面倒だから、もう話さないとおっしゃる方もいらっしゃいます。
長く連れ添ったのですから、夫婦の会話をもっと楽しんでいただきたいものです。
声をださないと、声帯を伸ばす筋肉がますます弱ってしまい、悪循環です。


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発声訓練をしましょう
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この様な方には、発声訓練をお薦めしています。
両手を胸の前で力を込めて合掌するように合わせながら、アー と声を出します。
通常の声の高さ、大きさで結構です。
長く声が続くように努力して下さい。
オペラの歌手がするように、
みぞおちで両手を組んで、左右に引っ張りながらアー と声を出すのもいい方法です。
いすに座り、自分が座った椅子のおしりのあたりの部分を両手で持ち上げるようにしながら
アー と言うのも有効です。
この発声訓練をそれぞれ3回ずつ、朝と夕方に2回、頑張って一ヶ月続けると大分声が出てきます。
アー と言える時間を計って、訓練により発声時間が伸びてくるのがわかると励みになります。
10秒声が続かない方は、10秒を超えるように頑張って下さい。
10秒声が続く方は、20秒が目標です。


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最後の手段は、手術です
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この発声訓練でも声の改善が得られない場合は、最終手段として手術があります。
声帯をピンと張る手術です。
皮膚を切開する必要があり、入院が必要です。
手術は局所麻酔で、30~40分で完了します。
手術中に、声を出していただき、最も出しやすいところまで、声帯をぴんと張ります。
ギターなどの弦楽器の弦を調整するのと同じ感覚です。
手術中に、日常生活のなかで、特に発声が難しく困っている言葉や声を出していただき、
手術がうまくいっているか判断します。

きおつけー と号令をかける方がいれば、
演歌を一曲、最後まで歌われる方もあり、

手術室は大変賑やかになります。
いつもはでなかった高いキーが出るようになると、患者様からOKが出て、手術は終了となります。

声は大変微妙で、わずかな変化で声は大きく変わります。
手術している医師も楽しい手術ですし、結果が良好ですと患者様も大変喜ばれます。
1週間で退院し、更に退院後発声訓練でリハビリをしていただくとさらに声がよくなっていきます。

声がかすれても、命には影響ありませんが、人間らしい生活を楽しむために、声はとても大切です。
医学は、不老不死の妙薬を探すことから始まりました。
20世紀の間に、人間の寿命はほぼ倍近くに伸びました。
今、100才以上のお年寄りも沢山いらっしゃいます。
不死の目的は、大分達成されつつあります。
死を迎えるまで、いかに若い頃のような機能を保ちながら、人生を謳歌できるか、
不老については、21世紀の大きな課題です。
高齢化社会の中、加齢現象により低下した機能を回復する治療は大変有意義だと感じています。


年のせいだとあきらめないで、一度お気軽にご相談下さい。

院長

hozawa (2011年11月 7日 15:11)