子供さんの睡眠時無呼吸症候群


睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が10秒以上止まることが、
1時間に五回
以上ある時に診断されます。
夜、頻回に目が覚めたり、いびきが多かったり、
日中眠くなるなどの症状が出ます。
睡眠時無呼吸症候群は大人の病気かと思っている方もいらっしゃると思いますが、子供さんにも起こる病気です。
子供さんの10人に1人はいびきをかき、1~3%に睡眠時無呼吸症候群の子供さんがいるとされています。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
上気道の狭窄が睡眠時無呼吸症候群の原因
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

いびきや、睡眠時無呼吸症候群は、鼻や口からのど仏までの上気道と呼ばれる空気の通り道の、
どこかが狭くなることで発症します。
大人の場合は舌根、のどちんこの裏側、のど仏、鼻などが狭くなる部位ですが、
子供さんの睡眠時無呼吸症候群では、アデノイドあるいは扁桃腺、またはその両者が腫れて、
気道を狭くしています。

アデノイドは、鼻の奥にある扁桃腺の仲間です。20130725hb.jpg
5才頃に最も大きくなり、その後小さくなります。
その次ぎに大きくなるのが、口蓋扁桃です。
小学校高学年まで、腫大し、その後徐々に小さくなります。
そして成人になるとに舌根扁桃という、
舌の付け根にある扁桃が大きくなります。

どの扁桃が大きくなっても、睡眠時無呼吸症候群の原因になります。
アデノイドが大きいと鼻の後ろの孔、後鼻孔が閉鎖されてしまいます。
大人では、鼻水が、1日1リットル出るとお話ししたことがありますが、
この鼻汁は、後鼻孔から喉に落ちていきます。
後鼻孔がアデノイドで狭くなると、鼻水が流れずいつも鼻がぐずぐずするようになり、感染すると蓄膿症になりやすくなります。
滲出性中耳炎も、発症しやすくなります。

口蓋扁桃が大きいと、食物も通りにくいので、食事が遅くなります。
扁桃炎を繰り返し、高熱を頻回に出すこともあります。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★20130725hc.jpg
成長への影響
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

子供さんは、成長期に当たりますので、無呼吸があったり、口呼吸をすると、体や顔の発育や、歯並びに影響が出ることがあります。

アデノイド顔貌といって、面長で顎が細く、上唇が厚くめくれて、口呼吸をする、何となくしまりのない顔になることがあります。
前歯のかみ合わせが悪く、反対咬合など歯並びが悪くなります。
息が止まると、酸素不足になり、肺で一生懸命息を吸おうとするので、漏斗胸と言って、本来膨らんでいる胸郭が内側にへこんでしまうこともあります。
心臓に肋骨が食い込むようになるので、ひどいときは手術が必要になります。

一方、寝る子は育つと言いますが、体の発育に必要な成長ホルモンは熟睡した夜の明け方に沢山分泌されます。
睡眠時無呼吸症候群があると熟睡できないので、成長ホルモンの分泌が低下し、低身長となり、精神発育が遅れることがあります。
また成長ホルモンが低いと、脂肪が分解されず、肥満しやすくなります。
夜尿も起こりやすくなります。

小学生の時は背が小さかったのに、中学生になると急に背が高くなる子がいますが、
これは中学生になって扁桃腺が縮小し、睡眠時無呼吸症候群が改善して熟睡できるようになったので、
成長ホルモンが沢山分泌されるようになるからです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
勉学への影響
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

頭痛や倦怠感、寝起きが悪い、胸焼けや慢性の咳が出る等、
睡眠時無呼吸症候群の患者様には様々な症状が出ます。
睡眠時無呼吸症候群の子供さんは、学校の授業中に居眠りをしやすくなります。
病気が原因の居眠りですから、本人は悪くありませんけれど、怒られてしまいます。
蓄膿症を併発すると、鼻性注意不能症といって、集中出きません。
鼻が詰まると、なかなか物事に集中できないものです。
滲出性中耳炎を併発すると、耳性注意不能症になり、勉強になかなか集中できなくなってしまいます。
聞こえが悪く、耳の圧迫感があるとやはり集中力が低下するのです。

情緒面では、夜尿があったり、寝返りが激しい等があります。昼夜逆転のため、
不登校となってしまうこともあります。
精神発育の遅れや、肥満、落ち着きなさ、多動症、自閉症等の行動異常が見られることもあります。
逆に、このような症状があっても、睡眠時無呼吸症候群が背景にある場合は、
睡眠時無呼吸症候群の治療で改善させることが出来ます。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
検査と治療は?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

ご自宅で、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることが出来ます。
いびきの程度、呼吸が止まるかどうか、仰向け、うつぶせ、側臥位など、体位によって症状が変化するかを見ることも出来ます。
お子さんが寝ているときの状態を、特に顔や、胸が呼吸によってどのように動くか、ビデオに撮って頂くと、さらに状況がよくわかります。

無呼吸があるとわかったら、気道の狭窄部を探します。
軽症の睡眠時無呼吸症候群なら、成長によりアデノイドや扁桃腺が小さくなるのを待つことで十分です。
鼻や耳の治療をすると、さらに改善させることも出来ます。
重症の睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、入院のうえ、全身麻酔下にアデノイドと扁桃腺を摘出する手術を受けて頂きます。
口を通じて行いますので、見えるところに傷はつきません。
全身麻酔の手術ですから、子供さんは何もわからないうちに手術は終わります。
約10日間の入院が必要です。
手術後三日目には、嘘のように静かに子供さんは寝れるようになります。
これまでいびきがうるさくて心配だったご両親は、あまりに静かなので、逆に息をしているか心配になることもあるほどです。
それほど、手術の効果は劇的です。

子供さんの睡眠時無呼吸症候群は、成長、学業、情緒などに様々な影響が出ます。
一度、影響が出るともとに戻らないこともあります。
子供さんに全身麻酔の手術を受けさせることは確かに、ご心配でしょうが、
扁桃腺の手術は、それほど大きな手術ではありません。
3才以上であれば扁桃腺をとっても、免疫能に影響が出ることはありません。
逆に一回の手術で、それ以降の生活が大幅に改善される場合が多いのです。

お子さんのいびきや睡眠時の無呼吸がご心配の時は、まず検査を受けさせてみましょう。

院長

hozawa (2013年7月25日 16:40)