2024年08月03日
聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)という、病気をご存知でしょうか?
耳の聞こえは問題が無く、
静かなところで1対1の会話は普通に行えるのに、
騒音の中での会話や、複数の人との会話になると、
音は聞こえるのに、何を言っているのか理解できなくなる病気です。
0.5〜1%の人にみられるので、
日本では120万人の患者さんがいると推定されます。
耳には異常が無く、
脳で音の情報を理解する部分に障害があるとされています。
聞き返しが多かったり、聞き間違えてしまったり、
口頭で言われたことが理解できず、すぐ忘れてしまいます。
小声や、早口で話されると聞き取ることが出来ず、
マスクをして話をしている人の声や、
電話での声も聞き取る事が難しくなります。
長い話を理解できず、集中して聞き続ける事ができません。
目で見る情報は理解できるのに、
耳から入る音の情報を覚えることが出来ません。
生まれつきの事が多いのですが、
子供さんでは、バイリンガルな環境に早くからおかれることで起こることがあります。
小さい頃は、症状を自覚できないので、
ご両親や周りの人が気づいてあげる必要があります。
発達障害、自閉症、多動症、学習障害を併発することもあります。
小学校高学年からは、聞き取りが悪いことを自覚するようになります。
このストレスで症状が悪化することもあります。
就職して、始めて聞き取りに問題があることに気づくこともあります。
電話など、聞き取りを主体とした仕事では、
適応障害、うつなどを起こし、
仕事を辞めなければいけない場合もでてしまいます。
聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)の方は、
ご自分に合った職種を選ぶことも大切です。
壮老年期に発症する場合は、
脳出血、脳梗塞などの脳の病気や、認知症が原因の場合もあります。
聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)は、
日本ではまだ認知度が低く、周りの理解が得られず、
患者様は大変苦しまれることがあります。
症状に気づかれたら、耳鼻咽喉科を受診し、
正しい診断を受けることが大切です。
聴力検査、ことばの聞き取り検査をして、
聴力は正常で、
静かな環境では、聞き取りも問題ないことを確認します。
聞き取り困難の自覚があり、
チェックリストや、騒音下で聞き取りが悪化することが確認できれば、
診断が確定します。
日本で、よく使用されるのが、
小淵らの『聞こえにくさに対する質問紙』です。
16の設問があり、0〜10点で回答し、
160点中、109点以下だと、
聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)の可能性が高くなります。
聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)は、
残念ながら、診断されても完治することが難しい病気です。
対策として6つのことが挙げられます。
まず、聞き取りの場所で、騒音を抑える用に環境を整えることです。
授業を受けるときは、なるべく前の席に座り、
先生にも繰り返し、はっきりと話してもらうようにお願いします。
ノイズキャンセリング機能のあるイヤフォンを使用すると
雑音が消され、聞き取れるようになる場合があります。
目で見る情報はよく理解できるので、
プリントやスライドなど文字の資料も合わせて活用すると理解しやすくなります。
言葉の情報はすぐに消えてしまうので、
メモを取ったり、
ボイスレコーダーなどで記録し、繰り返し聞くと理解が出来ます。
朗読CDやラジオを聞いて、聞き取りの練習をしたり、
カウンセラーに心理面のサポートを受けたり、
言語聴覚士に語彙を増やしたり、聞き取りの指導を受けるのも大切です。
聴力は正常ですが、
補聴器のノイズキャンセリング機能、指向性機能を活用すると、
雑音を最小限にし、言葉の信号を際立たせる事ができ、
聞き取りが出来るようになります。
補聴器をつけることで、
周囲の人に聞こえに問題があることをわかってもらうと、
協力を得やすくなる効果もあります。
聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)は、
困った症状で、なかなか完治は難しいですが、
周囲の人の理解と協力を得て、
対策を講じることで、
ご自分の能力を最大限発揮して頂きたいと思います。
院長
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