鼻水がのどにおりて困るかたへ

先日の爆弾低気圧による強風は凄かったですね。
クリニックから見える常禅寺通りのけやきもまさに折れようかと思うほど、しなっていました。
この強風で残っていたスギの花粉も、吹き飛ばされたようで、
スギの木の色もオレンジ色からあおあおとした緑色になってきました。
今年の大量飛散したスギ花粉の季節ももうすぐおしまいです。
桜のつぼみも膨らみはじめ、今週末には満開になりそうです。

花粉症の患者様のように、鼻から、水のように鼻水が流れることを、
英語ではRunning noseといいます。
まさに鼻が走っている感じでしょうか。
こんな激しい症状も困りますが、
鼻水がだらだらとのどに落ちる症状でお困りの方も沢山いらっしゃいます。
医学的には、後鼻漏といいます。

実は、正常な成人では1日約1リットルの鼻水がのどにおりているんです。
そんなにおりているかとびっくりされる方もいらっしゃるでしょうが、
鼻は空気中のゴミや、ウィルスなどを鼻水に絡めて、肺に入らないようにしているんです。
乾燥から守るためにも、1日1リットルは必要な量です。
鼻が詰まる、鼻水が出るとご自分の鼻に不平ばかり言っていませんか?
鼻は、毎日毎日あなたを外界から守るために一生懸命働いてくれています。
時には、感謝してあげて下さいね。

さて、通常の量より、鼻水が沢山増えると、前の方に鼻水が流れますが、
少し増えると、のどに下りる量が増えて、後鼻漏として感じられるようになります。

いつも痰が絡んでいるような感じがしたり、
咳払いをしたり、
痰を口から出さなければいけなかったり、
むせて、咳が出てしまったり、
夜、鼻水で息が苦しくなって、眠れない、

など様々な症状を、患者様がお話になります。
ご自分の鼻水で、夜寝ているとおぼれそうになると話された方もいらっしゃいました。

今回は後鼻漏についてお話しします。

後鼻漏の一番の原因は、慢性副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症です。
風邪をこじらせると、鼻腔と細い管でつながっている副鼻腔に炎症が起こり、
急性副鼻腔炎となります。
風邪薬を飲んだり、抗生物質を飲むと1週間で鼻の症状は良くなりますが、
まだ副鼻腔には炎症が残っており、ここで治療を中止すると、
慢性化し、副鼻腔から流れ出た粘液がのどに落ちて、後鼻漏となります。
いやな臭いを感じたり、頬や歯に違和感が出ることもあります。
副鼻腔の粘膜が水ぶくれになって、鼻腔に飛び出してくるとポリープになります。
こうなると完治するには手術が必要です。
最近は内視鏡を使って鼻の穴から手術が出来るようになりました。
以前の様に術後、顔が腫れたりすることもなく、痛みも少なくなりました。
ポリープが無ければ、内服薬を4〜6週間飲むと、ほぼ完治します。
後鼻漏がひどい副鼻腔炎の場合は漢方薬を併用すると、後鼻漏の症状が早く楽になります。

後鼻漏の2番目の原因はアレルギー性鼻炎です。
アレルギーというと、くしゃみ、鼻水がひどい、激しい症状を思い浮かべると思いますが、
鼻が詰まり、鼻水が喉に垂れる静かなアレルギーもあります。
こういう症状の時は、ご自分はアレルギーでは無いと思っている方もいらっしゃいます。
検査をするとアレルギーか、副鼻腔炎か区別することが出来ます。
このタイプのアレルギーは、通常のアレルギーの薬とは異なる薬で良くなることが多いです。

血管運動性鼻炎という温度変化や環境の変化に鼻の神経が反応して、症状が出る鼻炎もあります。
夜、布団に入って体が温まり、冷たい外気を吸うことにより、後鼻漏が起こることがあります。
この場合は抗アレルギー剤は無効で、漢方薬や点鼻薬で後鼻漏が治まることが多いです。

4番目の原因は、逆流性食道炎です。
夜間寝ている時に胃酸の逆流が起こると、鼻の奥の上咽頭にまで逆流が起こることがあります。
上咽頭には耳管という、耳とつながる管がありますが、
胃酸はこの耳管を通じて、耳まで逆流する事が知られています。
上咽頭に胃酸が逆流すると鼻の奥に炎症が起こり、鼻がのどにおりているような感覚がおこります。
胃酸を抑える薬や漢方薬で症状が治まります。

5番目の原因は、いびき症、そして睡眠時無呼吸症候群です。
いびきは、軟口蓋の "のどちんこ" が振動して音が出ることがありますが、
この部分が腫れるとやはり鼻と喉の奥の突き当たりの部分に違和感を感じるようになります。
いびきから更に進んで睡眠時無呼吸がおこると、逆流性食道炎も起こりやすくなり、症状は悪化します。
いびきは気道が狭いことでおこります。
内視鏡などで、どこが原因か調べて、適切な治療を受けることが大切です。

夜中、後鼻漏のためになかなか眠れなかった患者様も治療を受けると、
ぐっすり眠れるようになったと喜んでいらっしゃいます。

しつこい、症状ですが、あきらめないで一度、是非ご相談下さい。

院長

hozawa (2013年4月13日 11:25)