前回、『老化は病気』という新しい考え方を、ご紹介しました。
病気であれば、原因があり、原因となる物を治療すれば、病気は治る、つまり、老化を遅らせることができると言う考え方です。
老化に影響するのは、遺伝因子が30%、環境因子が70%と言われています。
『長寿遺伝子』、『若返り遺伝子』と言われるサーチュイン遺伝子を活性化すると、寿命が延長する事がわかりました。サーチュイン遺伝子は、空腹により活性化します。実際、カロリー制限を行うと寿命が延長することが、マウスなどの実験で証明されています。腹8分目にし、夜食や間食は避け、運動を心がけましょう。また、赤ワインの成分レスベラトロールもサーチュイン遺伝子を活性化する可能性が示唆されています。
環境因子には、呼吸で吸った酸素から作られる活性酸素による体のサビ、血糖の乱降下によるインスリンストレス、ホルモン分泌低下による身体の衰え、毎日の食事から蓄積される有害重金属や食物アレルギーによる障害などがあります。
酸素を吸って生きている私たちは、酸素によるサビすなわち老化を避けられません。吸い込んだ酸素の2%が体の中で活性酸素(酸化ストレス)となり、体をさびさせます。リンゴの皮をむくと、しばらくすると赤くなってしまいます。これがさびです。塩水やレモン汁をかけると、リンゴは赤くなりません。これは塩分やビタミンCが、リンゴがさびるのを防いでくれているからです。私たちの体の中にも、さびの原因や、さびから体を守る仕組みがあります。
食べ過ぎ、睡眠不足、激しい運動、喫煙、過度の飲酒、紫外線、ストレス、食品添加物、環境汚染、生活習慣病、農薬、漂白剤などにより酸化ストレスは増大します。酸化ストレス検査で、私たちの体がどのくらいさびているのか調べる事ができます。また、さびを防ぐ抗酸化物質のビタミンC、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンE、還元型コエンザイムQ10などの血中濃度を調べることで、ご自分の抗酸化力、すなわち、体がさびるのを防ぐ力を知ることができます。それぞれの抗酸化物質は、体の中で働く場所、役割分担があり、どれ一つ欠けても抗酸化力が低下します。
アンチエイジング健診を受けると、血管を初めとする全身の器官の老化度、老化を加速する老化危険因子を知ることができます。老化度は、筋年齢(筋肉量、筋力)、血管年齢(動脈硬化度)、神経年齢(高次脳機能)、ホルモン年齢(血中、唾液中ホルモン濃度)、骨年令(骨密度)があります。老化危険因子には、酸化ストレス、心身ストレス(血中コルチゾール、DHEA濃度)、ホルモンバランスの乱れ、遅延型フードアレルギー、腸内細菌バランスの乱れ、有害金属の体内への蓄積、必須栄養素欠乏などが有ります。検査内容は、高城剛さんの著書『不老超寿』に、詳細にまとめられていますので、参考にして下さい。100才以上生きている人は、全身がバランスよく老化し、老化危険因子が少ないことがわかっています。
アンチエイジング健診により、ご自分の弱点がどこに有るかがわかれば、禁煙など生活習慣を変えたり、専門の知識を持った医師の指導のもとに、サプリメントや、高濃度ビタミンC点滴療法、適切な運動、食事指導などによって、アンチエイジングを効率よく行う事ができます。全国のアンチエイジング医療専門クリニックを紹介した『アンチエイジング医療最前線』を参考に、相談されるといいでしょう。
アンチエイジングを毎日の生活の中で行うには、以下の事に気をつけられるといいでしょう。すでに、環境因子として、これまでご説明してきたことがほとんどです。
サーカディアンリズムを保つ。朝、太陽を浴びる。平日と休日で習慣を変えない。ブルーライトを夜、浴びない。
約90分の倍数の睡眠時間と深い眠りで、成長ホルモン、メラトニンアップ
睡眠不足は、食欲を抑えるレプチンを低下させ、食欲が増進する。更に、脂肪を蓄積するグレリンを活性化し、肥満のリスクが高くなる。
2.快食
自分に合った食生活を考える。インスリンストレスを避ける。
自分では作れないビタミン、ミネラルなどの必須栄養素を十分に摂る。
サーチュイン遺伝子の活性化のため、時には、週末のミニファスティング。
3.快便
4.ストレス発散
わくわくする(旅行、冒険、恋愛)、笑う。〜成長ホルモン、『癒しのホルモン』DHEAの分泌が高まり、『ストレスホルモン』コルチゾールが減る。
5.適度の運動
週2〜3回の30分ほどの筋肉トレーニングで、筋肉量、筋力維持と成長ホルモンの分泌アップ。
毎日15分の有酸素運動。3ヶ月継続すると、セロトニンの活性化が持続し、自律神経が安定する。
沢山あって、大変そうですが、最も老化が進んだ器官と最も大きな危険因子2つを改善すると、80%アンチエイジングは達成されます。医学の父、ヒポクラテスは紀元前の人ですが、毎日の生活に気をつけ、薬草のみで120才まで元気に生きました。ヒポクラテスを見習って、元気に、幸せに寿命を全うしましょう。
朴澤 孝治