朴澤耳鼻咽喉科

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2024年04月19日

胃酸の分泌を長期間抑えると起こること

 

日本人は、元々胃酸の分泌が少なめでしたが、
食事の欧米化とともに、胃酸の分泌が増えて、
逆流性食道炎の患者さんが増えています。

 

胃液が、食道に逆流し、
胸焼けや、呑酸、喉の違和感、夜間の咳など不快な症状を起こします。
胃酸を抑える薬を飲むと、症状が改善します。

 

 

胃酸を抑える薬には、
ガスターなどのH2ブロッカー、
タケプロンなどのプロトンポンプ阻害剤、
タケキャブなどのカリウムイオン競合型酸ブロッカー
などがあります。

 

これらの薬は、逆流性食道炎の他、
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
痛み止めの副作用の薬剤性胃潰瘍を防ぐ目的で処方されています。

 

日本の、薬剤の売り上げのトップ10に入るほどの量が処方されています。
これらの薬は、短期間使用する時は、ほとんど副作用も無く、
よく症状を抑えるので、大変有益です。

 

 

ところが、長期間に使用すると、
本来の胃酸の役割が失われることで、
様々な症状の原因となります。

 

胃酸は、pH1.0のとても強い酸です。
体内に胃酸がある理由があります。
栄養の吸収と解毒です。

 

 

胃酸は、タンパク質を小さく分割して、消化しやすくしています。
胃酸がないと、お肉が消化できずに、もたれるようになります。
お肉を避けるようになると、
私たちの体を作るタンパク質が不足してしまいます。

 

ビタミンB12は、赤いビタミンと呼ばれ、
野菜には全く含まれず、肉や魚介類に多く含まれます。
食物中のビタミンB12は、タンパク質と結合しています。
胃酸の作用で、この結合が切れて初めて、
ビタミンB12を吸収することができます。

 

胃を摘出した方では、ビタミンB12を吸収することができず、
ビタミンB12が欠乏し、貧血や神経の障害が起こり、
倦怠感、眼精疲労、肩こり、しびれなどの症状に悩まされます。
最近の、胃酸を抑える薬は、とても強力なので、長く服用すると、
胃を摘出したときと同じ症状が起こってしまいます。

 

ビタミンDの吸収には、腸内細菌の働きが重要ですが、
胃酸がないと、腸内環境の乱れが生じ、
ビタミンDの吸収がうまくいかなくなります。
骨粗鬆症など、様々な病気の原因となります。

 

鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルの吸収には、
イオン化の過程が必要で、胃酸がないと吸収が悪くなります。
それぞれ、大切な働きがあり、低下する事で、
貧血、甲状腺機能低下、味覚障害、骨粗鬆症などを起こしてしまいます。

 

 

もう一つの胃酸の大切な役割は解毒作用です。
口の中には、虫歯や歯槽膿漏を起こす沢山の細菌がいます。
これらは唾液とともに胃に入り込みます。
食物の中にも、細菌やウィルス、カビなどが混じっていて、
食事と一緒に胃に入ります。

 

胃酸は、これら有害な細菌を殺菌し、
10万分の1まで減らしています。
胃酸がないと、これら細菌が、腸に入り込み、
腸内細菌のバランスを崩してしまいます。

 

小腸内細菌異常増殖が起こると、
腸内にガスが発生し、お腹が張ったり、もたれるなどの症状を起こします。
腹圧が高くなり、逆流性食道炎の症状が悪化するので、
胃酸を抑えると更に、症状が悪化する悪循環に陥ります。

 

腸の感染症は稀ですが、胃酸を抑える薬の長期投与により、
感染症の発症率が上がることが知られています。

 

新型コロナウィルスも、胃酸がないと腸に到達します。
腸の粘膜に入り込み、増殖を繰り返すようになります。
長期間、便中にウィルスが検出され、
慢性の症状が続くロングコロナの原因と考えられています。

 

カビの一種のカンジダも、胃酸がないことで、
腸に入り込み、繁殖すると、腸の粘膜が傷害され、
リーキーガット(腸漏れ症候群)を起こします。

 

消化が不十分な物が体に入り、遅延型食物アレルギーを起こしたり、
有害な物を通してしまい、体調不良の原因となります。

 

 

このように、胃酸を抑える薬は短期間であれば、
大変有効で、安全な薬ですが、
何年も継続して服用すると、
様々な有害な症状の原因になってしまいます。

 

米国消化器病学会では、
胃酸を抑える薬は2ヶ月は有効であるが、
その後は、慎重に使用すべきだと勧告しています。

 

中止が可能であれば、中止する。

 

内服の必要があれば、
より短期間で、
より少量で、
より作用の弱い薬に変更する
事を推奨しています。

 

胃酸を抑える薬は、
漫然と長く飲む薬ではありません。

 

当院でも、2ヶ月飲んだら一旦休薬し、
食事の注意を徹底し、
漢方薬などの代用薬で、
十分、症状の改善が得られています。

 

長くお薬を飲んでいる方は、
一度、主治医の先生と相談されては如何でしょうか?

 

院長

 

 

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